イベントマロニエBIM設計コンペティション2021結果発表

公開審査の動画はこちら
マロニエBIM設計コンペティション2021公式サイト

1.開催概要

マロニエBIM設計コンペティション2021は、2021年11月26日に最終公開審査が実施され、最優秀賞(学生・社会人共通)、優秀賞(社会人・学生各1作品)、審査員特別賞、益城町賞、日事連賞の各受賞者が決定した。

マロニエBIM設計コンペティション2021では、社会的な問題意識と注目度の高い、被災地の復興と持続性のあるまちづくりの視点を明確に持つ熊本県益城町と協力の上、こうした重要な社会的課題を解決する新しい手段としてのBIMの可能性を示すとともに、そこに取り組む専門家としての努力と技能を評価する機会にした。そこで、課題敷地を熊本県益城町木山の横町線という通り全体のデザインと、そこにBIMデータをどう生かしていけるのかを問うものとされた。

また、コロナ禍においても参加のハードルが上がらないよう、前年度に引き続き、WEB上でのデータ提出及びリモートでの最終公開審査を実施した。その結果、合計45名(学生33名、社会人12名)のエントリーがあり、提出作品は30作品(学生21作品、社会人9作品)であった。説明会を兼ねて参加者に向けて行ったリモートでのワークショップにも、震災以降町の住民と一緒に復興計画に取り組んでこられた益城町役場の担当者やコンサルタントの方が参加し、結果として、地元住民の想いを汲んだ作品が多数寄せられた。

2.審査結果

※各紙面データはマロニエBIM設計コンペティション2021 特設ページにて閲覧可能

作品名 受賞者 所属
最優秀賞 ーLink Unitー 榊原 崇文 (株)安井建築設計事務所
優秀賞
(学生)
マキシ×メタボリズム 川端 巧己 熊本大学
優秀賞
(社会人)
寄り道にぎわい遊歩廊 菊野 優、
飯塚 進太郎
AIS総合設計(株)
益城町賞 「ひさしみち」が生み出す賑わい・景観・防災 豊崎 直樹 芝浦工業大学大学院
堀場賞 路×再生ー住民主体のまちづくりによる路の活性化ー 塚本 裕士 AIS総合設計(株)
池田賞 ~食と歴史~ 山野 皓成 麻生建築&デザイン専門学校
西田賞 木山のさんぽ道 日高 由実子 (株)太宏設計事務所
大西賞 道へ広がる暮らしの波紋
ー人の集まりかたを横町線へと広げるオープンスペースの提案ー
渡邊 魁杜 芝浦工業大学
日事連賞 巡り、恵む。 小野 将人 麻生建築&デザイン専門学校

最優秀賞
榊原 崇文  所属:(株)安井建築設計事務所
作品名:ーLink Unitー

講評

堀場委員長

今回のコンペティションにピッタリな提案だと感じた。リンクユニットというまちづくりにBIMを活用するなど、様々な活用の方法をイメージさせるプレゼンテーションであった。加えて、「Link Unit」というのも、抽象的な概念であるとの説明で、これからの可能性を感じた。

西田委員(最優秀賞及び優秀賞共通講評)

最優秀賞及び優秀賞については、まちづくりにBIMをどう活用するかということを開拓してくれた提案であった。特に最優秀賞の提案については、プレゼンテーションの中で示されたアプリを見てみると、そこから想像できる町の住民の参加の仕組みみたいなものが、非常にわかりやすく、この形はすぐにでも取り入れてもいいのではないかと感じた。
3案すべてに共通して言えることとして、ユニット等の限界がどうなるのかが気になった。仕組みとしてのBIMが参加型になっていく一方で、設計が改変されていったりデザインが拡張していくときに、形態として、身体的なものとしての建築がどうなっていくかということは、3案とも良い提案であったため、ぜひここから更に探求してもらいたい。

大西委員(最優秀賞及び優秀賞共通講評)

従来、設計者や施工者、企業のためのBIMというのが一般的であると思われるが、それがこのコンペでは「人々のためのBIM」という非常に難しい課題であったため、どのような提案がなされるのかと思っていた。そのような中で今回の最優秀賞及び優勝賞作品は「人々のためのBIM」ということが案の中でしっかりと考えられており、新鮮であった。普段BIMの研究をしている中で、BIMによって得をする人とそうではない人に分かれてしまい、結局は建築を使う人が得をしないのではないかと感じていた。しかし今回のコンペを通して、そうではないということを見れたのは良い経験であった。今後もBIMを自分たちのために使わずに、人々のために使ってほしいと思う。

優秀賞(学生)
川端 巧己  所属:熊本大学
作品名:マキシ×メタボリズム

講評

堀場委員長

屋根が特徴的で、この屋根が賑わいを感じさせる点が魅力的であり、災害復興という場面で役に立つ可能性を感じる、おもしろい提案であった。

西田委員及び大西委員

最優秀賞講評に記載の講評の通り。

優秀賞(社会人)
菊野 優、飯塚 進太郎  所属:AIS総合設計(株)
作品名:寄り道にぎわい遊歩廊

講評

堀場委員長

形が非常におもしろく、センシングを活用した提案もあり、その形とセンシングがもっと結びついていれば、より今回の課題に合った提案内容になっていたのではないかと感じた。考え方としては素晴らしく、おもしろい提案であった。

西田委員及び大西委員

最優秀賞講評に記載の講評の通り。

益城町賞
豊崎 直樹  所属:芝浦工業大学大学院
作品名:「ひさしみち」が生み出す賑わい・景観・防災

講評

益城町

地域住民と共に、まちづくりを進めていくという点を重視して、拝見した。この道は、木山初市や、みんなの夏祭りの際に、歩行者天国となって、地域住民が楽しんで歩く道。その住民の想いを大事にしながら、まちづくりを進めていきたいと思っている。その中で、初市や夏祭りの屋台をイメージした庇と、住民が大好きな益城町の飯田山、船野山をモチーフとした大庇が取り込まれたまちづくりというのは、町の人々にとって、親しみやすいのではないかと感じた。また、地震の記憶の継承や、防災というのは、町にとってとても大事なテーマ。これを大庇施設の中で重点的に取り組んでいくというテーマも、町のこれかのテーマにとても合っていると感じた。さらに、まちなみBOOKをGoogleマップに登録して、まちづくりモデルに取り組んでいくというのは、地域住民をまちづくりに取り込む一つの新しい手法だと感じた。

堀場賞
塚本 裕士  所属:AIS総合設計(株)
作品名:路×再生ー住民主体のまちづくりによる路の活性化ー

講評

堀場委員長

建築としての完成度とクオリティの高い作品であった。BIMの利用について、廃材利用やリサイクルなど、材料に属性を持たせて造れるということであったが、今回の提案も新品ではなく、廃材等を活用した提案であればもっと違うものになったと思われるが、そういった可能性を感じた提案であった。

池田賞
山野 皓成  所属:麻生建築&デザイン専門学校
作品名:~食と歴史~

講評

池田委員兼コーディネーター

バーチャルな町並みで、BIMでつくるものが、現在の姿だけでなく、過去の姿も未来の姿も、まとめてBIM化するというアイディアに、とても可能性を感じた。BIMは今でも、フェージングということで、建設の段階を属性で飛び越えるため、そういう意味では同じように、現在・過去・未来をまとめた設計とモデルを作っており、それをまちづくりに役立てるというのは、可能性のあるアイディアだと感じた。

西田賞
日高 由実子  所属:(株)太宏設計事務所
作品名:木山のさんぽ道

講評

西田委員

昔ながらのアーケード的な、町の中に2階建てのデッキがめぐるという感覚が非常にインフラ的だなと感じた。BIMというと、どうしても建築の話になりがちだが、この提案のような、土木と建築の間ぐらいのスケール感をBIMで一度試してみて、デッキはどう使うのか、その下はどうあり得るのかなど住民とディスカッションしていくということにBIMの可能性を感じた。加えて、BIMで設計された建築物もとても魅力的であった。

大西賞
渡邊 魁杜  所属:芝浦工業大学
作品名:道へ広がる暮らしの波紋ー人の集まりかたを横町線へと広げるオープンスペースの提案ー

講評

大西委員

非常に魅力的な空き地のデザインであった。斜めの屋根に屋上緑化があり、新鮮な視点がここで獲得できるのではないかと感じた。さらに、その下にある広場にもいくつかの諸室があり、その諸室に挟まれた広場ということで、何か新しい使い方が誘発されるような設計になっている点が良かった。課題としては、広場の使い方というのは難しいものであるため、BIMや情報技術を活用して、もう少し具体的な提案があると、より楽しい、広場を中心としたまちづくりができるのではないかと思う。

日事連賞
小野 将人  所属:麻生建築&デザイン専門学校
作品名:巡り、恵む。

講評

佐野委員

BIMを使うにあたっては、BIMのテクノロジーの精度を追求するか、BIMを使ってどう新しい造形を生み出すかだけでなく、今回のテーマのように、BIMを使ってどう地域を復興・活性化するかなどを含めて、いろんな可能性がある。今日の皆さんはそれぞれ力点が違うが、この提案は歩行者の視点に立って、どの可能性にもトライした案だと思う。これからも広い視野を持ちながら、BIMの腕を一層磨いていってほしい。あわせて皆さんそれぞれのチャレンジに期待している。

3.開催概要(コンペ応募要項より抜粋)

1)開催趣旨

本コンペティションは、2015年に(一社)栃木県建築士事務所協会が(公財)とちぎ建設技術センターと共催で、関東地域の建築を学ぶ学生のBIM技能の向上を目指して始まりました。好評を受けて参加者の枠を全国の学生に拡大した後、さらに2019年から全国組織である(一社)日本建築士事務所協会連合会との共催となり、応募資格を実務者にも拡大して、BIMの活用によるデザインの進化を全国の様々な規模や形態の組織に広く普及促進することを目的に、地方の立場から発信してきたことが高く評価され、今年度からさらに国土交通省の国庫補助事業として福岡県、熊本県と栃木県の地域を超えた運営協力により開催することになりました。この歴史そのものにBIM活用の社会的な重要度の増大と、それがもたらす新しい共同作業の効率化やネットワーク化の理解の拡大が示されています。我々の社会情勢は、依然コロナ禍によって様々な制約や困難を受けていますが、遠隔会議などの利用が一気に拡大したことが、これまでより地域や組織の枠に囚われない社会的協業の可能性を広げていることは、昨年度のコンペティションとしてのテーマでもあり、実際に遠隔プレゼンテーションによる審査会を経験したことも大きな自信につながりました。
さらに拡大を遂げた本年度のコンペティションでは、これまでの考えをもう1段階進化させ、建築分野におけるBIMの活用により社会へ貢献する姿勢を、一般の方へメッセージとして打ち出すことを視野に入れたいと考えます。
これまで建築業界内部としてBIMはデザインや施工管理の効率化を目指すツールであるという理解が支配的でしたが、本コンペティションでは当初から、その強力なコミュニケーションのツールとしての性格が、デザイン自体の可能性を拡大し、利用者や発注者に共感を得るための新たな道具であることを意識してきました。その上でさらに重要なのが、都市や社会の活動をリアルタイムなデータの流れで調整していこうとするスマートシティのような考え方との結びつきです。建物の様々な情報が整理されて保存されているBIMデータは建物の完成後にもその利用状態のセンシングや自動制御などの技術で有効活用できることが、建築業界の外部からも注目されつつあることです。すなわち、これからのBIMは設計や施工の支援だけでなく、建築で行われる活動を支援する仕組みとして、利用や運用の方法までを総合的に革新する力で社会に役に立つ可能性があります。その重要な意義を具体的な実践とわかりやすい事例で、建築業界内だけでなく、一般の方に広めることを本コンペティションの狙いと考えたいと思います。
本コンペティションでは、社会的な問題意識と注目度の高い、被災地の復興と持続性のあるまちづくりの視点を明確に持つ熊本県上益城郡益城町にご協力をいただき、こうした重要な社会的課題を解決する新しい手段としてのBIMの可能性を示すとともに、そこに取り組む専門家としての努力と技能を評価する機会にすることを考え、「熊本県上益城郡益城町のまちづくり活動にBIMデータを役立てる方法を考える」ことをテーマにします。したがって本コンペティションで参加者に期待されるのは、実体としての建築的デザインだけでなく、その建築と同じように将来も活用し続けていくことができるBIMデータの持つ利点を考えることを重要な技術的視点として、社会の役に立ち、十分な実現性があり、そして美しさも兼ね備えた提案を示すこととなります。
当コンペティションは今年度より(一社)日本建築士事務所協会連合会主催の国庫補助事業となり、担当会を(一社)福岡県建築士事務所協会、サポートを(一社)栃木県建築士事務所協会、(一社)熊本県建築士事務所協会が担当。課題敷地を、熊本地震で甚大な被害を受け、復興の最中にある熊本県上益城郡益城町と定め、三会一丸となって進めて行く事となりました。

2)応募条件(※チームでの参加も可。)

学 生:一級建築士の受験資格要件に定められた学校に在籍する学生
社会人:建築士事務所の所員

3)エントリー及び作品提出方法

WEB サイト及び専用サーバー

4)エントリー受付

令和3 年10 月~11月8日まで

5)コンペ実施期間

コンペ期間:令和3 年11 月1日~11月10日
一次審査通過者発表:令和3年11月20日
二次審査(公開審査):令和3 年11 月26日

6)課題

益城町木山蛭子町のまちづくりに貢献するBIM

7)対象敷地

熊本県上益城郡益城町木山蛭子町

8)審査委員等

役職 氏名 所属
審査委員長 堀場  弘 シーラカンスK&H(株)代表取締役
東京都市大学教授
コーディネーター・審査委員 池田 靖史 (株)IKDS主宰
慶應義塾大学教授
審査委員 西田  司 (株)オンデザインパートナーズ代表
東京理科大学准教授
大西 康伸 熊本大学大学院准教授
佐野 吉彦 (一社)日本建築士事務所協会連合会理事
BIMと情報環境WG主査
岩本 茂美 (一社)福岡県建築士事務所協会会長
佐々木宏幸 (一社)栃木県建築士事務所協会会長
南  孝雄 (一社)熊本県建築士事務所協会会長

9)受賞者

  • 最優秀賞(学生・社会人共通)
  • 優秀賞(社会人)
  • 優秀賞(学生)
  • 審査員特別賞・益城町賞・日事連賞

10)事業担当

  • (一社)福岡県建築士事務所協会
  • (一社)栃木県建築士事務所協会
  • (一社)熊本県建築士事務所協会

11)後援

国土交通省、熊本県、熊本県上益城郡益城町、(公社)日本建築士会連合会、(公社)日本建築家協会、(一社)日本建築学会、建築情報学会

12)協賛

【特別協賛】

  • (株)建築資料研究社/日建学院
  • (株)総合資格
  • グラフィソフトジャパン(株)

【協賛】

  • 福井コンピュータ アーキテクト(株)
  • オートデスク(株)
  • エーアンドエー(株)

13)開催形式

本会場:熊本ホテルキャッスル 熊本市中央区城東町4-2
一次審査:データをWEBで受付、リモート審査。
最終公開審査:審査委員は本会場に集合し、二次審査当日のプレゼンテーションはリモートで実施。