導入事例オープンBIMで広がるコラボレーション
2023.10.02
オープン BIM のポイント
建設業は多種多様なステークホルダーが参加する産業です。建築主をはじめ、コンサル会社、建築士事務所、ゼネコンやサブコン、直営工事会社などが一つの建物を建設し、完成後は維持運営を行います。こうしたプロジェクト関係者すべてが BIM に参加しやすい環境を整えデジタル化を推進していくために、当社はオープン BIM の考え方に基づくプロジェクトフローを構築しています。
以下に示す通り、オープン BIM はプロジェクト関係者のニーズに合ったソフトを個々に運用していくことで、関係者がシームレスにつながり、ノウハウを垣根なく共有することが可能となります。ここで重要なことは、モデルの作成以上に各モデル間のコーディネーションです。当社では「重ね合わせ会」というモデル作成時のレビューを繰り返し、モデル間の調整を行い、全体の完成度を高めています。各モデルを IFC 形式でエクスポートし、Solibri で重ね合わせ、BIM マネージャーと BIS(BIM Information Secretary)というモデル重ね合わせに特化したオペレーターが、関係者全員が参加する重ね合わせ会を運営します。通常のプロジェクトは完成度 60%前後から重ね合わせ会を始め、8~10回このサイクルを回し、LOD200~300程度の設計モデルを完成させます。
さらに BIM ソフトを扱うことができない関係者にも直感的にモデルやその情報を閲覧できる UI/UX が平易なソフト(Stream BIM)を使うことで、プロジェクト関係者全員が気軽に BIM に触れることができる環境を整備しています。
オープン BIM の事例:竹中工務店岡山営業所
当社岡山営業所建替計画でのオープン BIM の事例についてご紹介します。建物中央部に吹き抜け階段を持つ成形な2階建てS造、延べ面積750㎡の事務所です。建設時の各段階での代表的な使用例を以下に示します。
(1)設計段階
効果的なシミュレーションと VR により関係者との早期合意形成を行い、外装アルミルーバーのピッチやサイズの最適化を行いました。
(2)申請段階
当初からモデルによる確認申請審査方法について日本ERI(株)と協議し、審査を補助する自動算定ツールなどを共有、設構備の IFC モデルの電子提出により、審査側(日本ERI)の PDF 図面の整合確認の支援などを行いました。
(3)施工段階:デジタルファブリケーション
設計モデルから施工モデル、工作機械に連動する製作モデルまで連携を行うことで、正確に素早く設計意図を伝えるとともに、施工者、鉄骨ファブリケーターの生産性の向上につなげました。
(4)施工段階:施工管理
各種BIMデータと連携した AR等(HoloLens、HoloBuilder)による効率的な施工管理と品質管理を行いました。
(5)工事監理段階
BIM データと連携したデジタルツールにより、書類作成や保管、写真管理業務をなくし、工事監理業務を効率化しました。
(6)FM 段階
設計 BIM や生産 BIM に FM情報を加えた維持管理 BIM を作成し、FM ツールとデータ連携を行うことで建物維持管理のデジタル化を促進しました。
オープンBIMの事例:海外の先進事例
ノルウェーでは、国と国立病院が病院の維持管理や運営をデジタル化して、コストをかけずに最良の医療を国民に届けようと努力しており、最先端技術の導入を自らリードしています。公共施設は人々のためになるようデジタル化によって安価で最適な状態に保たれ、さらに最新の機器へ更新も行えるという社会貢献のためのデジタル化を進めています。
そのデジタル化を実施している国立病院のプロジェクトを見学しました。このプロジェクトでは発注者側のエンジニアが中心となって「ペーパーレス」を合言葉に BIM モデルや情報を中心としたワークフローに取り組んでおり、設備工事などではほとんど 2 次元の図面を製作せず、iPad でモデルの情報と取り付け要領書のみを見て施工することに成功しています。またこのプロジェクトでは、設備器具の一つ一つに ID が割り振られており、先述した StreamBIM や dRofus といったクラウドサービスに登録されている情報と照合することができます。
このようなオープン BIM で広がるコラボレーションを実現するためには、発注者、設計者、施工者が一体となったプロジェクト全体のマネジメントが必要であることを感じました。企業の壁を越えてコラボレーションを進めていくことで、日本の建築界も BIM の効果を最大化し、より付加価値の高いモノづくりを実現することができると考えます。当社としては実践を通して建築界に貢献していきたいと考えています。