イベントとちぎ建築プロジェクト2019・マロニエBIM設計コンペティション

とちぎ建築プロジェクト2019

令和元年11月26日(火)、宇都宮東武ホテルグランデにおいて「とちぎ建築プロジェクト2019」が開催されました。これまでは栃木県建築士事務所協会で開催されていましたが、今年度から、日本建築士事務所協会連合会との共催となりました。

第1部 マロニエBIM設計コンペティション

最終公開審査が行われたBIM設計コンペティションは、応募資格を変更し、学生と社会人(日事連会員)に拡大すると共に、BIM設計コンペ応募要項についても新たな審査システムを構築して実施されました。

今回のBIM設計コンペの特徴は、学生と社会人が同一の課題をBIMを使って72時間で作成し、提出されたBIMの3次元データにより審査を行なうことです。

使用されるBIMソフトに制限がないため、提出物はIFCフォーマットに変換されたBIMデータ及び作品の魅力を表現した5枚の画像データとし、審査はBIM-IFCデータをビューワーで閲覧して行なわれました。

1次審査では、コンペ実施要領を満たして提出された41作品について審査が行われ、学生5作品、社会人5作品の入選作品が選考されました。

入選者は、最終審査用のプレゼンテーション動画を提出し、とちぎ建築プロジェクト2019当日に行なわれた動画による公開審査の結果、各賞の受賞者が決定しました。

BIM設計コンペ最終公開審査会場

最優秀賞、優秀賞受賞者一覧

最優秀賞

宇都宮市森林公園サイクルロードセンター」阿部仁祐
[養清堂アーキテクツ建築設計事務所(神奈川会)]

優秀賞

ヨコミゾマコト賞
Wrap」 林直哉[麻生建築&デザイン専門学校(福岡県)]

ヨコミゾマコト賞
グランゲート」 本橋範一[株式会社フケタ設計(栃木会)]

石澤宰賞
「走り抜ける織込みの隙間」 樺浩太[熊本大学大学院(熊本県)]

石澤宰賞
「〜PIN BIM〜」 鈴江佑弥[(株)安井建築設計事務所(大阪会)]

池田靖史賞
「空気感」 深浦天[麻生建築&デザイン専門学校(福岡県)]

池田靖史賞
「未来のにぎわいをつくるBIM」 番屋陽平[(株)安井建築設計事務所(東京会)]

とちぎ建設技術センター理事長賞
CYCLOID」 松本大知[宇都宮大学大学院(栃木県)]

日本建築士事務所協会連合会会長賞
「UTSUNOMIYA Rin Rin Park」 上村哲也[宇都宮大学大学院(栃木県)]

日本建築士事務所協会連合会会長賞
サイクルステーション“みちしるべ”」 中岡進太郎[(株)安藤設計(栃木会)]

第2部 基調講演、鼎談

BIM設計コンペの審査委員である建築家のヨコミゾマコト氏(東京藝術大学教授)とコンピュテーショナルデザインの第一人者である石澤宰氏(竹中工務店設計本部)による基調講演が行なわれました。

基調講演−1

講 師
東京藝術大学教授、建築家 aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所取締役 ヨコミゾマコト氏

テーマ
文化的地域遺伝子としての建築

講師:ヨコミゾマコト氏

基調講演−2

講 師
(株)竹中工務店設計本部アドバンストデザイン部
コンピュテーショナルデザイングループ課長 石澤宰氏

テーマ
BIM・コンピュテーショナルデザイン・データが紬ぐ未来

講師:石澤宰氏

鼎談

2013年の初回より当企画のアドバイザーでもある建築家の池田靖史氏(慶應義塾大学教授)がコーディネーターを務め、パネリストとしてヨコミゾマコト氏、石澤宰氏による鼎談が行なわれました。最新のBIM技術の動向や建築設計の展望などについて、建築界の第一線で活躍されている建築家としての多様な視点や発想などの貴重なお話をお聴きすることができました。

コーディネーター
池田靖史氏

パネリスト
ヨコミゾマコト氏・石澤宰氏

3氏による鼎談

マロニエBIM設計コンペティション 受賞作品・講評

※紙面の関係上受賞10作品の内、5作品を掲載。
マロニエBIM設計コンペティションの受賞者及び最終公開審査プレゼンテーション動画は、(一社)栃木県建築士事務所協会ホームページにてご覧いただけます。

最優秀賞

「宇都宮市森林公園サイクルロードセンター」
阿部仁祐[養清堂アーキテクツ建築設計事務所(神奈川会)]

講評:ヨコミゾマコト氏

「一次審査において自分は、コンセプト、造形性、祝祭性と日常性、計画性、表現力などの観点から各提案を拝見した。その中で阿部案は、当初それほどの高得点ではなかった。しかし、公開審査におけるプレゼンテーションビデオと応募者本人へのインタビューにより、大きく評価が変わった。ご息女が造った粘土模型の3Dスキャンデータが元になっていること、72時間一人作業でその建築化をめざしたトライアルの結果であること、この2つの点が明らかになった時点で、それまでの評価軸は一気に形骸化し、他案に対し圧倒的な存在感を持って最優秀賞が確定した。このような人間味ある作品に出会えたことは、テクノロジー進展の望ましい方向性を確認できたという点で大きな喜びだった。」

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優秀賞(ヨコミゾマコト賞)

「Wrap」
林直哉[麻生建築&デザイン専門学校(福岡県)]

講評:ヨコミゾマコト氏

「ロードレースのクライマックスのあり方は、選手と観客両者にとっていかにあるべきか、という問いかけからコンセプトを組み上げ、フィニッシュ地点を四方から囲み、選手を歓声で包み込むことのできる造形を生み出した。その設計アプローチは十分な説得力を持っていたし、他者にはない独自性のある提案だった。短い制作時間であったにも関わらず、空間の構成や場の高揚感など、伝えるべきこともしっかりと表現されていた。もし、行き止まりを作らない観客動線の回遊性が付加されていれば、さらに良い案になっていたと思う。」

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優秀賞(ヨコミゾマコト賞)

「グランゲート」
本橋範一[株式会社フケタ設計(栃木会)]

講評:ヨコミゾマコト氏

「熟度の深い職人と浅い職人では、同じロボットアームを使っても、出来上がるものが全く違うという話を思い出した。提案は、単純な門型のシェルターだが、構造部材だけでなく手摺やルーバーなど、各部の太さや厚みなどに破綻がなく、素材と強度によるプロポーション、光と影による透明感など、基礎的な空間感覚がしっかり身についている方の提案だと思った。BIMやAIが労働としての設計作業環境を変えていくことは確実だが、そのような感覚は設計者やデザイナーにとって益々重要なものになるに違いないと考えさせられた。」

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優秀賞(とちぎ建設技術センター理事長賞)

「CYCLOID」
松本大知[宇都宮大学大学院(栃木県)]

講評:川村定男氏

「今回は、プレゼンの方法などが変わったことからか、表現方法に様々な工夫がみられ、学生の皆さんの表現力に改めて感心しました。本作品は、サイクルロードセンターとして各機能の配置がうまくまとめられており、大会時を想定したひと工夫があればと思うところはありましたが、高さを抑えながら、自転車の車輪をイメージしたサイクロイドを活用した屋根など、日常の自然豊かで静かな森林公園周辺の自然環境や山並みに溶け込んだ計画となっていました。」

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優秀賞(日本建築士事務所協会連合会会長賞)

「サイクルステーション“みちしるべ”」
中岡進太郎[株式会社安藤設計(栃木会)]

講評:佐野吉彦氏

「設計の日常とは、限られた予算やスケジュールの中で最大の成果を挙げるための奮闘である。その中で研ぎ澄まされた感覚が、多忙な社会人がこのコンペに立ち向かう時に如何なく発揮される。中岡案はBIMにある明瞭さ・統合性などをうまく活用することによって、建築の中で最も重点とすべき空間を魅力的に計画した。内外部を通してロードレースの持つ爽快感も宿らせており、要求条件を巧みに読み解きながら、熟達度の高い成果を導き出している。」

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コンペの概要(コンペ応募要項より抜粋)

設計課題

宇都宮市森林公園サイクルロードセンター

宇都宮市森林公園は、毎年、世界的な自転車ロードレースである「ジャパンカップ」が開催され、ロードサイクルファンにとっては「聖地」といえる場所です。本建物は、ジャパンカップ開催時にセンターエリアとして、スタート・フィニッシュ地点の観客席となる部分を、通常時にはロードサイクル愛好家及び宇都宮市民の憩いの施設として仮想の計画をするものです。

応募要項

応募資格
学生及び社会人(日事連会員事務所の所員)

エントリー期間
2019年10月1日~10月31日

設計条件(機能プログラム)の発表
2019年11月3日実施期間:2019年11月3日正午~11月6日正午

提出物及びデータ形式

1次審査
BIM-IFCデータ、画像データ、設計主旨

最終審査
1次審査通過作品の動画による公開審査(mp4、mov、wmv)

審査委員

審査委員長
ヨコミゾマコト(東京藝術大学教授)

審査委員
池田靖史(慶應義塾大学教授)
石澤宰 (竹中工務店設計本部アドバンストデザイン部コンピュテーショナルデザイングループ課長)
川村定男(とちぎ建設技術センター常務理事)
佐野吉彦(日本建築士事務所協会連合会理事)