コラム国土交通省-「建築分野におけるBIMの標準ワークフローと その活用方策に関するガイドライン(第2版)」を公表
2022.03.31
国土交通省 建築BIM推進会議にて、BIMモデル事業の検証結果等に基づき議論を重ね、令和4年3月30日(水)に「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第2版)」が策定・公表されました。
>>ガイドライン(第2版)DLページ(建築BIM推進会議 > 成果物等(ガイドライン・BIMの活用状況調査等))
1.ガイドライン第2版における改定の概要
ガイドライン第2版では、主に以下の内容を改定
- これまでの建築BIM推進会議の活動成果、モデル事業の成果等から得られた知見を盛り込むとともに、実務者の意見を踏まえ、記載順を整理するなどわかりやすい構成に
- ワークフロー全体にわたって、以下の8項目に関する記載を充実
① 発注者メリットと発注者の役割
② EIRとBEP
③ ライフサイクルコンサルティング
④ 維持管理BIM
⑤ 各ステージの業務内容と成果物
⑥ 標準ワークフローのパターン
⑦ データの受け渡しの方法
⑧ 各部会等の取組
2.ガイドライン第2版 改定のポイント
発注者メリットと発注者の役割
- 発注者がメリットを感じられ、発注から維持管理・運用にいたる建築物のライフサイクルの観点から、発注者・所有者等による取組に着目して記載を充実化
- 発注者の区分や関係する多様なステークホルダーを整理し、想定される活用目的やメリットについて事例を充実化
- 発注者の利用目的や方法に応じた関係者の業務のあり方をガイドライン化
BIM活用の前提として必要なEIR(発注者情報要件)とBEP(BIM実行計画)
- EIRについて、特定のプロジェクトにおいて、受注者がBIMに関わる業務を実施する上で発注者が求める要求事項として定め、業務の契約に先立って提示すべきものとして記載
- BEPについて、特定のプロジェクトにおいてBIMを活用するために必要な情報に関して受注者が提示する取決めとして記載
- 各団体等において検討されているEIR/BEPのひな形について、想定される利用者とともに整理
ライフサイクルコンサルティング
- ライフサイクルを通じ、データの利用等を通じた建物の価値向上のためにコンサルティングを行う業務として位置づけ、業務を具体化
維持管理・運用BIM
- 維持管理段階での活用イメージが広がってきたことから、「維持管理・運用BIM」として内容を充実化
標準ワークフローのパターン
- 標準ワークフローのパターンについて、発注者をはじめとした活用の目的に応じわかりやすいよう改めて整理するとともに、既存建築物をBIM化し、維持管理・運用に活用するパターンを追加
データの受け渡しの方法
- データの受渡しに際し事前に協議を行うべき事項や、CDE(データ共有環境)、ビューワー等を用いたデータ共有について具体化
モデル事業等の事例の充実化
- 令和2・3年度のモデル事業の成果に基づく事例をそれぞれの項目の中で紹介し充実化
3.ガイドライン策定の背景と今後
BIMの活用により建築分野における生産性向上等が期待される中、現状は、設計段階のみ、施工段階のみの活用にとどまっていることが課題となっており、プロセスを横断するかたちでのBIM活用の促進が求められています。
そこで、官民が一体となってBIM※1 の活用を推進し、建築物の生産プロセス及び維持管理における生産性向上を図るために設置した「建築BIM推進会議※2」において、BIMのプロセス横断的な活用に向け、関係者の役割・責任分担等の明確化等を図るため、標準ワークフロー、BIMデータの受け渡しルール、想定されるメリット等を内容とする「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」は令和2年3月に策定されました。
その後、BIMモデル事業※3等において、ガイドラインを実際の様々な建築プロジェクトに活用し、標準ワークフローに沿ってBIMを活用した場合のメリットや、実運用に即した留意点が明らかとなったことを踏まえ、ガイドラインの内容について更なる議論を重ね、ガイドライン(第2版)が策定されました。
今後も、継続的にガイドラインの改定に関する議論を行う予定とのことです。
なお、本ガイドライン及び「建築BIM推進会議」等の資料及び議事録については、以下の国土交通省のホームページに掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html
※1 BIM:Building Information Modelling
コンピュータ上に作成した主に三次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・ 性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデルを構築するシステムのこと
※2 令和元年6月設置、委員長:東京大学 松村秀一特任教授
※3 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業