コラムBIMの導入を考えるⅡ-これから導入を

BIMの導入を考える

2022年3月、本コラムに(一社)宮城県建築士事務所協会(以下、宮事恊)会員のBIM導入の現状について掲載しました。1年半が経過し、どのくらい普及したのでしょう。実は、ほとんど変わっておりません。ただ、関心はかなり高くなっており、宮事恊で行う『BIMセミナー』をはじめ、業界で行っているBIMに関するセミナー等の参加者も少しずつ増えているようで、関心の高さが感じられます。今回、小規模事務所4社の開設者が集まり、福井コンピュータアーキテクト(株)から講師を招いて、独自の勉強会を開催しました。

今回、勉強会に参加した小規模事務所4社の概要

第1回勉強会
BIM講習会に先立ち、3DCADを使って木造住宅の増築と内部改修設計を行いました。事務所C以外は、普段使用している『ARCHITREND』ですので、トレーニングを兼ねたおさらいでした。

第2回勉強会
いよいよBIMの勉強会です。
『BIMとは』という内容の講義を受講後、実際にBIMを使って作図しました。テーマは『3階建てRC造事務所ビルの設計』。GLOOBEを使用して基本操作や入力の仕方等、基礎的な実習を行いました。2時間行い、予定通り完成。

第3回勉強会
前回の勉強会を受けて、BIM導入について問題点を出し合い、講師を含めた意見交換会を行いました。

<意見交換の概要>
A~C事務所は、開設者本人がBIMを使用しますが、D事務所の開設者は主に営業を担っているため、スタッフがBIMを使うことを前提にしています。

1)コスト

  • イニシャルコストは当然として、導入後のソフト更新など高い維持費が必要となる。

◎導入の仕方は、概ね以下の3つの選択肢が考えられる。
①ソフトを一括購入する方法
IT導入補助金が活用できる場合があり、上手く使えれば負担が少なくなる。ただし、バージョンアップの費用がその都度、必要になる。(安いものではない)
②毎月のリースとする方法
こちらもバージョンアップの費用がその都度、必要になる。
③1年間の使用権を購入する方法
月払いまたは年払いの選択で、毎年使用権を更新する方法。年毎の更新となり、バージョンアップされたシステムを毎年使用できるため、常に新しいバージョンのソフトを使用できるメリットがある。割高にはなるが、1年更新のため、1年で止めることも可能。
※ソフトによって購入方法が異なります。詳細はソフトウェア会社へご確認ください。

2)操作方法の習得

  • 年齢的にこれから操作方法等を覚えるのが辛い。(今回の勉強会の出席者は全員60代)
  • 実は、高齢者にとって1番大変なことかもしれませんが、『やる気』が大切です。CADを使えるスキルがあれば、こなせそうな気もしますが…。

3)BIMソフトの互換性

  • 他のBIMソフトも知りたい。互換性が無いと聞く。
  • ソフトの比較検討がなかなかできない。最初に使ったソフトや、関連事務所が使っているソフトになるのではないか。
  • 異なるソフト間のやりとりはIFC変換で対応可能と聞いたが、やってみないとよく分からない。CADのように簡単にはいかなさそう。

4)周囲の導入状況

  • 取引先の事務所(受注先・協力事務所とも)や役所はBIMを使っていない。
  • 他事務所とプロジェクトを組む場合、自社だけBIMを使用していてもどうにもならないが、基本計画または基本設計までをBIMで行っても良いのではないか。メリットはありそう。
  • 参考までに2~3年前に補助金を活用してBIMを導入した事務所の話を聞いたことがあるが、業務にはほとんど使用していないと聞いた。宝の持ち腐れではないか。

5)BIMによる建築確認

  • 2025年度からBIM図面審査が開始され、BIMの生データによるデータ審査についても並行して検討されている。

6)BIMの用語、意味が分かりにくい

  • 本サイトの中に用語集があり、参考になる。

勉強会を終え、各事務所の現時点でのBIM導入に対する考え

事務所A
木造の設計がほとんどなので、現在使っている3DCADで十分な気がする。現時点で、BIM導入のメリットがあまり感じられない。周りの動向を見ながら検討したい。

事務所B
事務所A同様、3DCADを使いこなす方が良い気がする。今のところ導入は考えないが、BIMには興味がある。

事務所C
BIMの導入を検討する。提携している協力事務所との関係や費用面で問題はある。(提携している意匠事務所、構造事務所ともにDRA-CADを使っている)現時点では、提携事務所でBIM導入は考えていないようだ。今後一緒に考えていきたいと思う。
BIMのメリットはかなりあると感じた。基本計画(プレゼン)のみでBIMを使い、基本設計から実施設計は今まで通りDRA-CADを使うことを考えている。そう考えた場合、1年間の使用権契約で月額20,000円程度(GLOOBEの場合)ならばあまり負担にならず導入できるのではないか。1年毎の更新なので、上手くいかなければ1年後に解約できるのもありがたい。今使用しているPCの更新時期でもあり、都合がいい。

事務所D
所内のみのプロジェクトが多く、BIMは検討の余地がある。1ライセンスでは使えないので、やはり費用面は気になるが、使用権契約ができるのであれば、スタッフと協議し、前向きに検討したい。

BIM普及について

冒頭で述べたように、宮事協管内では、BIMの普及にまだ時間がかかりそうですが、BIMに関心を持っている事務所は少なくありません。関心のない事務所も若干あるようですが、BIMに関する情報提供が多くなってゆけば、少しずつですがBIMを導入する事務所が増えてゆくものと思っています。

執筆者:BIMと情報環境WG 委員 千葉清純