コラムBIM USES DEFINITIONS やさしいガイドブック

「BIM USES DEFINITIONS やさしいガイドブック」は、令和4年度BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(先導事業者型)(以下、BIMモデル事業)を活用して公開された発注者のBIM活用のメリットを分かりやすく解説したガイドブックです。
今回はやさしいガイドブックの内容と使い方をご紹介いたします。

発注者にとっても魅力的なBIM

建物情報を3次元モデルと合わせて確認できるBIMは、設計者だけでなく発注者にとっても衝撃的なツールです。発注者から「設計者がBIMを使っているようだが発注者も何か活用できないか」と問い合わせを受けることが増えてきました。しかし、言葉で説明することが難しく、説明しても発注者に意図が正しく伝わっているか不安になるのもBIMの特徴です。
そこで分かりやすく発注者にBIMのメリットを伝えられないかと良い方法を探していた時に発見したのがニュージーランドの「BIM USES DEFINITIONS」でした。

BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク

ニュージーランドのBIMinNZ Steering Groupという団体が公開している「The New Zealand BIM Handbook」の付録資料「Appendix D BIM USES DEFINITIONS」は、BIMの活用方法を説明した英語の資料です。見積、工程計画、設計レビュー、記録モデルの作成、資産管理、建物の維持管理など、21項目の中からBIMを活用したい項目を選択し、優先度と共にEIR、BEPに記載するというものです。弊社では発行元に翻訳・公開の許可を取り、「BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」という24ページのハンドブックとして公開しました。

BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク

BIM USES DEFINITIONS やさしいガイドブック

「BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」は専門用語も多く、発注者が理解するには難しい内容でした。そこでBIMモデル事業の補助を受け、92ページのやさしいガイドブック(解説本)を作成し、公開しました。イラストと文章を用いた解説、日本国内の事例に基づいた説明を施すことにより、専門知識を持たない発注者でも理解することが可能になります。

21項目のBIM利用法を分かりやすく説明したイラスト

また、大学、病院、データセンターなど、12の建物用途別の発注者メリットを整理しました。分析に際しては実際のBIMプロジェクト関係者にヒアリングし、イラストと文章で解説を加えています。

発注者にメリットのあるBIM利用法が分析された12の建物用途

また、これまで国や設計団体、施工団体、維持管理団体の各団体で別々に発行されていた各種BIM情報も発注者の立場からは同じものです。そこで横断的に整理し、解説を加えて掲載しています。

BIM関係書類を発注者の目線で横断的に整理

21項目の個別のBIM利用法は詳細に解説を加えています。発注者にとって難しいキーワードに解説を掲載し、各団体から発行されているBIM関連資料から該当する事例を出典と共に掲載しました。また、BIM利用法と国土交通省BIM標準ワークフロー(S0~S7)との対応表を掲載しています。

BIM利用法を詳細に解説

BIM USES DEFINITIONS やさしいガイドブックの使い方

想定している使い方 その1)打ち合わせに活用

発注者から「BIMを活用したい」と連絡を受けた際、やさしいガイドブックを打ち合わせ資料の一部として活用する、もしくはまずURLを送付し、発注者にあらかじめ読んでいただき、発注者側の要望を事前に整理していただくなどの使い方になります。他プロジェクトのBIMモデルや活用方法をそのまま伝えることはできませんが、やさしいガイドブックは既に公開されている資料を元に構成しておりますので、21項目をわかりやすく理解でき、設計者と発注者で効果的なコミュニケーションが図れます。

想定している使い方 その2)BIM発注に活用

発注者がBIMをプロジェクトで活用したいのであれば、EIRに具体的なBIM活用法を記載し、「BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」や「同 やさしいガイドブック」を参考文献として活用いただけます。発注者のBIM活用方法が21項目から選択され、詳細解説を参考文献で補足することができるため、受注者(設計者、施工者等)とのコミュニケーションが楽になります。そのうえで受注者側から示されるBEPの項目チェックにも活用でき、受注者との間でのBIMデータの情報齟齬を軽減できます。

設計者がライフサイクルコンサルティングとして発注者側に寄り添い、実際のプロジェクトでBIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスクを活用した(仮称)プレファス吉祥寺大通りの事例は、令和3年度BIM モデル事業「Life Cycle Consulting」にレポートしておりますのでご参考にしてください。

Life Cycle Consulting

執筆者:(株)日建設計 安井謙介