BIMナレッジベースArchicadのBIMオブジェクトについて

オブジェクトの呼称と種類

Archicadにおける「オブジェクト」とは、建物モデル内に配置される部品要素の総称で、主にGDL(Geometric Description Language)で定義されたパラメトリック要素を指します。一般的なBIMソフトで用いられる「壁オブジェクト」「梁オブジェクト」とは概念が異なり、Archicadでは壁や梁は「組み立て要素」として扱われます。

オブジェクトは主に家具や設備機器などの一般オブジェクト、ドア・窓といった開口部オブジェクト、2D表現専用のラベルや注記用オブジェクトなどに分類され、ライブラリ上では「オブジェクト」「ドア」「窓」「マーカー」などのカテゴリとして整理されています。

これらのオブジェクトは、GDLで定義されたGSM形式のファイルとして管理され、単体の部品として保存されます。複数のGSMをまとめて配布・管理する場合には、LCF(ライブラリコンテナファイル)が用いられ、プロジェクト単位や組織内でのライブラリ運用に適しています。

ライブラリとオブジェクトの関係は「入れ物」と「中身」に例えられます。プロジェクトファイル(PLN)はオブジェクト自体を内包せず、読み込まれたライブラリを参照して配置します。そのため、適切なライブラリが読み込まれていない場合、オブジェクトの欠落が発生する点には注意が必要です。

他のBIMソフトウェアでオブジェクトと称されるArchicadの「組み立て要素」については、柱や梁、壁、スラブ、ゾーン、階段などがあります。各要素の編集設定や断面形状や複合構造を組み合わせることで、多様で柔軟な形状を作成できます。

またArchicadの特徴として、ツール名に縛られずにモデリングできる点が挙げられます。例えば、梁ツールを用いて壁やスロープを作成することも可能です。これらの組み立て要素にはオブジェクト同様にプロパティを用いて属性情報を付与できます。このように形状表現の自由度は高い一方で、BIMとして正しく扱うためには、要素の役割に応じた適切な分類を割り当てることが重要となります。

図:Archicadのオブジェクトとライブラリの関係性

主な特徴や性質

Archicadのオブジェクトは、標準ライブラリとして豊富なオブジェクトが最初から用意されており、ドア・窓といった建具類から、家具・設備、ラベルやマーカーなど、設計実務で頻繁に使用される部品が幅広く揃っています。これにより、設計初期から詳細設計、図面作成までを通して、追加作成の手間をかけずにオブジェクトを活用することができます。

Archicadのオブジェクトの大きな特徴として、すべてのオブジェクトがインスタンスパラメーターのみを持つ点が挙げられます。同一のオブジェクト定義(GSMファイル)から、配置ごとに寸法、仕様、属性、表示方法を個別に設定でき、サイズ違いや仕様違いを一つのオブジェクトで柔軟に表現できます。

これは、Archicad独自のGDL(Geometric Description Language)によるパラメトリック定義に基づく仕組みであり、図面表示と3Dモデルの整合性を保ちながら多様なバリエーションを扱える点が強みです。

GDLは単なる寸法変更にとどまらず、条件分岐や計算式を用いて、入力値に応じて形状や構成部材、表示内容を切り替えることができます。例えば、幅や高さに応じて部材数を自動調整したり、平面・立面・断面・3Dで異なる表現ルールを持たせたりすることが可能です。

また、表示スケールや詳細度に応じて簡略表示と詳細表示を切り替えるなど、図面用途を強く意識した制御が行える点もGDLオブジェクトの自由度の高さを示しています。これにより、設計意図や作図ルールをオブジェクト自体に組み込むことができ、作業の効率化や表現の統一につながります。

一方で、従来のArchicad標準ライブラリ(現在はモノリスライブラリと呼ばれる)は、Archicad 28以前ではバージョンや言語ごとに個別に提供されていました。そのため、バージョンアップ時にオブジェクトが正しく引き継がれない、他言語版のプロジェクトを開くとオブジェクトが欠落するといった不便さがありました。

Archicad 28で導入されたグローバルライブラリでは、こうした課題が解消され、言語やバージョンを意識せずに共通のライブラリを利用できるようになっています。ライブラリはモジュール化され、必要に応じて自動的に更新・追加されるため、将来のバージョンへの移行もスムーズです。これにより、ユーザーはライブラリ管理に煩わされることなく、安定した環境でオブジェクトを活用できるようになりました。

作成/編集方法および難易度

Archicadのオブジェクトは、用途やスキルレベルに応じて複数の方法で作成・編集することができます。

最も自由度が高い方法が、GDL(Geometric Description Language)を直接プログラムする方法です。形状生成、表示制御、パラメーター、条件分岐などをコードで細かく制御でき、高度に最適化されたパラメトリックオブジェクトを作成できます。一方で、GDLの理解が必要となるため難易度は高く、主に上級者やライブラリ開発者向けの方法です。

次に、Library Part Makerを使用する方法があります。Library Part Makerは、GDLを直接記述することなく、既存の要素やモデリング結果をもとに実務で必要となる範囲のパラメトリック性を持つオブジェクトを作成できる公式アドオンです。主に詳細度に応じた2D・3D表現の切り替えや、属性・表示ルールに基づく制御を行うことができ、設計図面とモデル表現の整合を取りやすい点が特徴です。

一方で、寸法や形状を数式や条件分岐で自在に変化させる高度なロジック制御は限定的で、自由度はGDLを直接プログラムする方法に比べると低くなります。難易度は中程度で、プログラミング知識を必要とせず、設計者自身が標準部品や図面用オブジェクトを整備する用途に適した手法です。

三つ目は、既存の要素をオブジェクトとして登録する方法です。壁やスラブ、モルフなどで作成した形状をオブジェクトとして保存することで、簡易的なオブジェクト化が可能です。

また、自動テキストを用いてオブジェクト化する事でプロパティと連動したラベルの作成も可能です。操作は直感的で難易度は低く、定型部品の再利用に有効ですが、パラメトリックな調整範囲は限定されます。用途と求める柔軟性に応じた使い分けが重要です。

オブジェクトが提供される環境

Archicadのオブジェクトは、主にライブラリ環境を通じてユーザーに提供・利用されます。標準的には、Archicad本体に同梱される標準ライブラリとして、家具・建具・設備・注記用オブジェクトなどが用意されており、インストール直後からすぐに使い始めることができます。

近年は、Archicad 28以降で導入されたグローバルライブラリにより、言語やバージョンを意識せずに共通のライブラリを利用できるようになり、将来のバージョンでも継続して使いやすい環境が整っています。

また、オブジェクトは外部ライブラリとして追加して利用することもできます。GRAPHISOFT社が提供するForwardオブジェクトやメーカー提供オブジェクト、BIMcomponents.comなどのオブジェクト配布サイトからダウンロードしたオブジェクトを読み込んで利用できます。これらはGSMファイルやLCF(LIBPACK)として管理され、BIMcloudを用いたチーム設計でも同じ環境を共有できます。

メーカー提供のオブジェクトは、実物に近い形状や意匠が再現されている反面、データ容量が大きくなることがあります。そのため、多数配置すると3D表示や操作が重くなる場合があります。設計の初期段階では標準オブジェクトを使い、必要な箇所のみメーカーオブジェクトに差し替えるなど、設計フェーズに応じた使い分けが重要です。

さらに、他のソフトで作成されたデータをオブジェクトとして利用できる点も特徴です。RevitのRFAファイルやRhinocerosの3dmファイルなどを読み込み、Archicadのオブジェクトとして配置できます。これにより、メーカー部品や意匠性の高い形状をモデル内で活用できます。

一方で、これらのデータは形状情報が中心となるため、Archicad標準のGDLオブジェクトと比べると、サイズ変更や表示制御の自由度には制限があり、多数配置した場合の動作にも注意が必要です。

執筆者

株式会社日建設計
テックデザイングループ BIMマネジメント部
大門 浩之