コラムBIMの導入を考える-これから導入を考える方に

2022.03.31

BIMの導入を考える

平成26年3月19日 国土交通省大臣官房官庁営繕部から『BIMガイドラインの策定とその運用について』が発表されました。このことによりBIMを意識し始めた方々は多いと思います。 私のまわりでもBIMを積極的に導入した事務所もがありましたが、ガイドラインの冒頭に「受注者の自らの判断でBIMを利用する場合や、技術提案に基づく技術的な検討を行うにあたってBIMを利用する場合に適用します」との文言があり、この文言を見て「まだいいか」と思われた事務所が実は多数だったと思います。

私が所属する一般社団法人宮城県建築士事務所協会(以下宮事恊)会員の中で、現在BIMを導入している事務所は、正会員約350事務所の内、数えるほどしかありません。かくいう私の事務所でもBIMはまだ導入していません。

『日事連BIMと情報環境ワーキンググループ(以下WG)』に委員として2019年2月の第3回から参加させていただき、3年ほど経過いたしました。

参加のきっかけは、宮事恊が日事連より参加要請を受け、宮事恊会長から「ぜひ参加してBIMに関する情報を入手してきてほしい」と声を掛けられたことです。BIMの知識も乏しい中で参加させていただき、現在に至ります。

WGのメンバーの中でBIMを導入していないのは私の事務所だけですが、先に述べたように宮城県内、日本国内でもBIMを導入している事務所はまだまだ少数だと思います。CADの導入率に比べたら本当に極わずかです。

BIMをすでに導入され、活用されている方々のお話はたくさんうかがいます。本サイトの中にも活用事例集があり、「なるほど、素晴らしい」と思うばかりです。私だけでなく「すごい」、「使いたい」などと思われた方々は多いのではないでしょうか。

しかし、その割には導入している事務所が少なすぎます。

では、なぜBIMを導入していないのでしょう。それぞれに、したくてもできない理由があるようです。宮事恊会員の実際の声をここでご紹介いたします。
それに対する私のコメントを参考までに【 】内に記載させていただきました。

高額なコスト

  • イニシャルコストはソフトだけではなく、PCを含めたシステムにかなりの金額が必要である。どのくらいかかるのか見当がつかない。
  • 導入後のソフトやパソコンの更新など、維持費が大変そうだ。
  • 投資した分稼げるのか。

【コストに関しては、事務所を維持していくうえで大きな問題です。何台導入するか、どのように使うかによって、直接コストだけでなく時間的なコストを含めたさまざまな角度から検討が必要です。資金面では、助成金制度があります。制度の情報など聞き逃さないようにしましょう。】

そもそも受注先(役所・元請)がBIM対応していない

  • 受注先は官庁や役所の物件が多く、役所でBIMを使っていない。あるとき、BIMを推奨され、導入したばかりのBIMを使って仕事をしたが、成果品はJWCADとPDFデータでの提出を求められた。BIMを使ったことで二度手間になった。
  • 再委託の仕事が多く、元請自体BIMが入っていないから今は必要ない。

【いわゆる模様眺めのようです。興味があるのであれば、早めに導入準備をしておいたほうがいいでしょう。遅かれ早かれBIMの時代は来ると考えられるからです。】

外注先の事務所(意匠・構造・設備)がBIMを入れていない

  • 自社はBIMを導入したいが、②とは逆に外注先の協力事務所がBIMを導入していないために実施設計に使えない。

【コスト高と共にBIMが普及しない大きな要因だと考えます。業界全体で取り組まなければ先には進みません。逆にいえば、必要に迫られればもっともっと導入する事務所が多くなると思います。】

どのソフトがいいのかわからない 決められない

  • いざ導入をしようと思っても、今後、受注先(役所、元請)あるいは再委託先(構造事務所、設備事務所、積算事務所)でどのソフトを使うのかを見極めてから導入するソフトを決めたい。互換性がないと聞く。
  • ソフトを比較すると一長一短があり、自事務所にはどれがいいのかわからない。
  • CAD導入で失敗した経験がある。早い時期に高額なCADを導入したが、後に使い勝手のいい安価なソフトが見つかった。あるいは無料ソフトが出た。
  • まわりの事務所がまだ導入していない。多くの事務所が使うソフトを選びたい。
  • BIMにもJWCADのような無料ソフトはないのか。あればすぐにも導入する。

【「無料のBIMソフトがあればいい」というのはみんなの願いですが…。無料の体験版をいろいろためしてみると、かなり参考になります。数あるソフトの中から、いわゆる使えるソフトを見極める事が重要です。「受注先が施主様だけではなく、設計事務所からの受注も多いため、簡単にはソフトを決められない」。これもよく耳にする話しです。】

BIMを知る

今さらですが、BIMに少しでも興味をお持ちでしたら、まずはBIMをよく知ることだと思います。本サイトでは『BIM』についてかなりの知識と情報が得られます。そして、実践セミナーなどに積極的に参加して、実際に動かしてみるといいでしょう。さらには、まわりの人達との情報交換も大切です。

「BIMというシステムは、基本データを入力すると三次元で立ち上がり、構造設計、設備設計、積算までもやってくれる。現場での施工図もできてしまう。さらに維持管理にも使える」。これが夢か現実かは、ご自身で確かめてみてください。

いつ、どのBIMソフトを導入するか。BIMをよく理解し、ソフトを知ったうえで業界の流れを知り、業界の一員として、次世代への橋渡しとして、そして経営者して、積極的に取り組んでいくべきときが来ています。

BIMを知ったうえで導入か否かを考えるのと、知らずに導入できないのでは大きな差があります。BIM導入について一緒に考えてみませんか。

執筆者:BIMと情報環境WG 委員 千葉清純