2025年6月、日本建築学会は「日本におけるEIRとBEP活用実態調査」と題する技術報告を発表した。本報告は、2023年に実施された全国的なアンケート調査を基に、BIMの中核要素である「EIR(発注者情報要件)」および「BEP(BIM実行計画書)」の国内における運用実態を明らかにした。
今回の調査結果をまとめた報告書は、日本建築学会の技術報告集 第31巻 第78号 (2025年6月号)に掲載されている。下記のリンクから、誰でも無料でダウンロード可能。
BIMの適用範囲が拡大し続ける今、EIRとBEPの理解・導入は業界全体の「共通言語」として必要不可欠である。ぜひ、この報告書を一読し、業務で活用してはいかがだろうか。
以下、報告書の概要。
1.なぜ今、EIRとBEPが注目されるのか
BIMの本格的な導入が進む中、プロジェクトの成功には「情報マネジメント」の整備が不可欠である。
EIRは、発注者の意図や要望を受注者に明確に伝える文書であり、BEPはそのEIRを受けて、受注者がどのようにBIMを活用するかを具体化した計画書である。両者は契約文書の一部となり得る、極めて重要な位置づけを持つ。しかしながら、国内ではEIR・BEPの導入事例が限定的であり、その実態は長らく「見えにくい」状態にあった。
2.国内におけるEIR・BEP活用実態を明らかにした初の網羅的調査
本調査は、日本建築学会の「IPDコラボレーション研究WG」によって実施された。
国土交通省のBIMモデル事業参加企業を中心に、設計事務所11社、施工会社9社、計20社を対象にアンケートを行い、以下のような実態が明らかとなった。
- 76%の案件において、EIRの提示に基づきBEPが作成されていた
- 発注者の68%において、BIM担当者またはライフサイクルコンサルタントが配置されていた
- 維持管理フェーズにおけるBIM活用は民間が主導しており、公的機関はやや遅れが見られる
これらの結果から、EIRの提示がある案件ではBIM活用の目的が明確化され、プロジェクト推進においても効果が期待できることが示された。
3.発注者インタビューから見る、実践的な活用効果
さらに本調査では、実際にEIRとBEPを導入した発注者に対するヒアリングも行われた。
不動産業者やデータセンター運営企業などの発注者からは、以下のような具体的効果が報告されている。
- EIRにより発注者の意図が明確に伝達され、BEPにより受注者の提案内容を比較・評価しやすくなった
- 厳しいスケジュールの中で高品質な設計・施工を実現するうえで、EIR・BEPが重要な役割を果たした
他、詳細は報告書参照。