導入事例現場と図面に寄り添うBIMツール GLOOBEを選んだ理由

2026.02.02

嶋瀬 岳彦

(株)OFFICE WILD ONE 嶋瀬設計事務所(埼玉会)

当社は、埼玉県入間市に拠点を置き、主に医療・介護分野に特化した建築設計をBIMで行っています。設計事務所としての歴史は浅いものの、並行して30年以上にわたり、建物管理会社を運営しており、竣工後の建物の維持管理業務を自社の管理会社が引き継ぐことで、設計から運用まで一貫した品質の確保に努めています。

BIM導入のきっかけと原点

BIM導入のきっかけは、設計業務に携わる中でゼネコンの定例会に参加した際の出来事でした。会議中、PC画面に映し出された海外のBIMクリエイターによる作業風景を目の当たりにし、その高い表現力と正確性、そして何よりも実際の空間を再現した設計プロセスに感動を覚えました。その瞬間、これまでの設計手法との違いや可能性に強く興味を持ち、自身の業務にもBIMを取り入れてみたいという想いが芽生えました。

BIMソフト選定のプロセスと最適な選択

BIMの導入を検討する中で、まずはインターネット上で各社のホームページを閲覧し、さまざまなBIMソフトの情報収集を行いました。複数の体験版を実際に使用し、操作感や機能、業務との親和性などを比較検討した結果、自分の業務スタイルや目的に最も適していると感じた、福井コンピュータアーキテクト(株)の「GLOOBE」を採用することにしました。GLOOBEは国産ソフトならではの建築基準や図面様式との親和性が高く、直感的な操作性と豊富な日本仕様テンプレートにより、導入後のスムーズな立ち上げにもつながりました。

BIM導入の経緯と拡張

2015年にBIMソフトをサブスクリプション契約(オプションなし)で導入し、翌年、パース関連のオプションを追加し、機能を拡張しました。2019年には買い取り契約へ移行し、複数のオプションを同時に購入して本格運用、段階的な機能強化を経て業務への定着を図りました。

BIM導入初期における操作習得の苦労と工夫

BIMの導入当初は、ソフトの操作に慣れるまでに多くの時間を要し、各コマンドの機能を理解することにも苦労しました。作業は「一歩進んでは立ち止まり、二歩進んではまた立ち止まる」という状況の繰り返しで、なかなか思うように進まない日々が続きました。

このため、当時の図面作成では2DCADとBIMの併用によるハイブリッドな作業体制をとっていました。

具体的には
 ・躯体や建物全体のボリュームに関してはBIMを活用
 ・建具表や家具図などの詳細図は2DCADで作成
といった分業的な方法により、段階的にBIMの活用範囲を広げていきました。

1つの案件の完成には非常に多くの時間がかかりましたが、この積み重ねによりBIMの機能への理解が進み、後の作業効率向上につながったと感じています。

BIM活用による図面再構築の取り組みと成果

大きな転機は、築30年以上が経過した特別養護老人ホームのリニューアル依頼で、設計・図面作成において大きな課題がありました。建築主より提供された資料は新築当初の青焼き設計図のみで、竣工図や施工図は一切保管されておらず、さらにその後、複数回の改修が行われていたものの、改修図面すら存在していませんでした。

まずは現状把握と図面化が急務であり、既存建物の実態に即した図面の作成が必要でした。そのため、すべての作業を思い切ってBIMへ移行することを決断。青焼き図面を画像として取り込みトレースする一方で、現場での実測と照合を繰り返しながら、BIM上で正確な形状・寸法を構築していきました。

特別養護老人ホーム (左)内観 (右)BIMモデル
青焼き図面のトレース

図面再構築における作業過程とBIM化への考察

青焼き図面しか資料がない状況下での改修プロジェクトにおいて、まず既存図面の再現と現況把握が大きな課題でした。青焼き図面を写真でトレースし、下図としてBIMに取り込んでいく過程では、現地の寸法との食い違いが数多く見受けられました。

そのため、BIM上で図面作成 → 現場で採寸確認 → 修正 という工程を幾度も繰り返し、最終的に図面の完成まで約1年を要しました。

この取り組みにより、現況建物の寸法・形状・状態をBIM上で正確に再現することができ、チーム内でのコマンド操作の理解や運用も広まりました。

また、図面をBIM化する中で、以下の点に気づきを得ました。
 ・青焼き図面を画像データ化した際、寸法が詳細に反映されていないケースが多く、
  正確な面積算出が困難。
 ・CAD化した図面は設定によって小数点以下9位まで寸法が扱えるが、それにより
  数値上の有効面積が実物と乖離する可能性あり。
 ・2DCADが出始めた頃に作成された図面では、設計図は残されているが、竣工図が無い、
  または中身が設計図と変わらない場合が多く、実際には現場レベルでのCAD運用が浸透
  していなかったと推察される。

これらの経験を踏まえ、BIM化の際には、区画に関する資料(面積表・仕上表など)を基に、壁・スラブ・天井・建具等の構成要素を先に要素ごとに材質・厚さ・仕上げ・性能などを入力しておくことで、作業の精度・効率の両面で有益であると考えます。

BIM活用による新たな業務展開

古い建物のBIM化で高い評価を得たことが契機となり、これをセールスポイントとして建築主から他の法人への紹介へとつながりました。その経験から、さまざまな施設において青焼き図面やPDF設計図をBIM化し、設計情報をデータベースとして保存・活用する取り組みを行うようになりました。

これにより、建築主のファシリティマネジメント(FM)業務にも協力可能な体制が整い、信頼関係が構築され、現在では以下のような業務が新たに広がっています。
 ・土地取得計画段階からの相談対応
 ・新築案件およびリニューアル案件の企画
 ・他設計事務所(2DCAD主体)への作図支援

BIMを核とした業務展開により、設計活動の幅が大きく広がり、多様なニーズへの対応力が向上しました。

計画段階でのBIM活用と行政調整への効果

近年では、計画初期からBIMを活用し、地積測量図を取り込んだ上でボリューム検討や集団規定の確認を実施しています。建築主への提案や行政説明の際には、ノートPCにBIMデータを格納し、モバイルモニターを用いて現場で提示することで、視覚的な理解が促進されます。

消防署との事前協議においても、スプリンクラーや感知器などの設備配置をBIMで「見える化」することにより、従来の平面図による説明よりも理解のスピードが向上したことを実感しています。

介護・医療・保育施設のプランニングでは、行政との調整が特に重要となる場面が多く、モデルプランを画面上で提示しながら動線計画等を説明した結果、担当行政から「分かりやすい」と高評価を得ました。加えて、補助事業の申請時には3Dパース図面の添付が求められることもあり、児童福祉施設計画においてもBIMの活用は非常に有効だと感じています。

デザイン会議の様子
建築主との会議
行政との協議

他設計事務所との共同作業とATDriveによるクラウド活用

BIMの活用により、他の設計事務所との共同作業が増加しています。2DCAD事務所のプランニング図面をベースにBIM化を行い、ビューワファイルに変換して設備協力事務所や意匠事務所と図面を共有しながら計画を進めるケースも多く、最近では、福井コンピュータアーキテクトのクラウド「ATDrive」を活用して、ビューワファイルをクラウド上で共有・閲覧しながら協議を行う機会が増えています。

以前は専用のビューワソフトが必要で、スマートフォンやタブレットでは閲覧できませんでしたが、ATDriveの導入によりそれらのデバイスでも簡易的な閲覧が可能となり、簡易的なプランニングの打ち合わせにおいて大きな効果を発揮しています。

ATDriveを活用してビューワファイルをクラウド上で共有・閲覧

BIM共同作業と今後の情報共有の展望

GLOOBE導入済みの協力先と数度調整を試みたものの、相手側が当社での作業を希望したため、他設計事務所や建築会社との共同作業で同一ソフトによる連携には至っていません。Webや直接指導する意向も伝えましたが、協力先が自社での運用に対して不安を感じている様子が見受けられ、対応には難しさが残っています。今後はSNSなどを活用し、小規模ながらも情報を相互に共有できるコミュニティの構築を目指しています。特に、メーカーサポートだけでは補えない部分(例:造作家具図面への3D部品の取り込み、Illustratorで作成したデザインサインの3D取り込みなど)について、実務に即した具体的なノウハウを共有できる場が必要であると感じています。こうした体制が整えば、BIM活用に取り組む設計者や技術者がより増えていくと考えています。

家具図 2DCADからBIMへ
Illustratorで作成したロゴのBIM化

BIM運用におけるデータ管理と共有体制

当社ではサーバーを設置せず、通常の設計データはOneDriveにてクラウド管理しています。本社PCは外部からVPNを経由してリモート接続が可能な体制を構築し、本社PC内に常時データを保存しています。一方、本社以外のPCは必要に応じてクラウド上からデータをダウンロードして使用する運用としています。

BIMソフトウェアにおける特定の条件設定は、クラウド上の指定データと常時同期されており、どの拠点・どの時間帯においても、統一された条件下でBIMデータを開くことが可能です。これにより、作業環境の一貫性と業務効率の向上を図っています。1つのBIMデータを複数名で共同編集する際には、ソフトウェアのモデリング機能(建物の分散管理および外部参照)を活用し、分担作業を可能にする体制を構築しており、複数拠点間での円滑な協働と、データ整合性の維持を実現しています。

また、本社ではネットワークHDD(SSD)にてバックアップデータを管理しており、協力会社および施工時の建築会社とはGoogleDrive等のクラウドサービスを通じてPC内のデータを同期・共有し、現場定例会などで活用しています。クラウドの共有については個々のスキルに温度差があるため、セキュリティや機能連携のために追加の設定や本人確認の多いOneDrive(Microsoftアカウント)は社内のみで使用し、社外との連携では、初期設定の項目が少なく比較的安易に登録が完了できるGoogleDrive(Googleアカウント)を使用しています。

建築主との打ち合わせでは、ATDriveを使用してビューワデータを共有し、内装デザインや家具配置・仕様の確認などに活用しています。クラウド環境を基盤とした柔軟な情報共有体制により、社内外との設計協議を円滑に進めています。

BIM運用におけるPCスペックの選定と留意点

アプリの起動時間に大きな差はありませんが、3D画面の表示には一定の時間を要する傾向があります。現場定例会や建築主との打ち合わせには、(C)モバイル1のスペックで十分対応可能ですが、レンダリング画像の作成など高負荷な処理においては、最低でも(B)デスクトップ程度の性能が求められ、作業効率にも影響します。

行政との打ち合わせで使用するビューワデータやATDriveによる閲覧には、(D)や(E)のモバイル機器・タブレットでも問題なく対応できています。

これまでの経験から、BIM運用には以下の点が重要であると考えています。
 ・デスクトップPCはメイン機として、高性能GPUと十分なメモリを搭載すること。
 ・モバイルPCはGPU使用時の熱負荷に注意が必要であり、冷却機能(ファン等)の
  あるモデルが望ましい。
 ・GPU非搭載機ではBIM画面の3D画面動作が遅く、データによっては表示しない
  ことがあるため、導入前に必ずスペック確認を行うこと。
こうした点に留意することで、BIMの安定した運用と業務効率の向上が図れると思います。

(左)現場定例会 (中央)本社PC (右)営業所PC

BIMの導入当初は、操作に戸惑い、試行錯誤を繰り返しました。失敗や悩みは誰にでもあるものですが、それらを乗り越えることで、確かな技術力と自信が育まれていきます。今もなお学びの途中ですが、自らの事業の発展、そして技術者としての成長を目指して日々取り組んでいます。同じように挑戦されている皆様とともに、前向きに歩んでいきたいと思います。

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プロフィール

嶋瀬 岳彦(しませ・たけひこ)

BIM初心者として多くの試行錯誤を重ね、少しずつ操作に慣れてきました。失敗も成長の一部。事業の発展と技術力向上のため、共に挑戦していきましょう。